客数ではなく「客」を見ろ

数字ではなく心に目を留める-顧客理解が生むリピーターと売上アップの魔法
ビジネスの世界では、客数を増やすことが成功の指標とされることが多いですが、果たしてそうでしょうか。闇雲に客数ばかりを追っていくと実は客数が減っていくという事態になることもあります。

客数をKPIに設定している会社も多いと思いますが、もしかすると、大事なことを見落としているかもしれません。
「なぜか客数が減っている」という方は、一度立ち止まって考えてみませんか?本当に大切なのは、数字が示す「客」ではなく、彼らが持つストーリーや期待です。顧客理解が深まることで、結果的にリピーターや単価が向上し、売上が回復するということが本質的なのではないでしょうか。いくつか実例を交えながら、今回のテーマを深堀りしていきたいと思います。

顧客理解の重要性
現代の消費者のニーズは本当に多様で個々の期待も異なっています。こうしたニーズを無視すると、すぐに他の選択肢に流れてしまうのが現実なので、「自分のことを理解してくれている」という感覚が、顧客にリピートしてもらえるかどうか の分かれ目になるのです.
事例1 ある地方の小売店Aの苦境と再生
地元の小売店Aのオーナー、田中(仮)さん。彼の店は以前から人気がありましたが、最近同業のライバルが同じ商圏に店を出し、客数が減ってきていました。陳列をあれこれ変更するのですが、客数は回復しません。日々の客数を見て一喜一憂する毎日です。客数が多かった日はもちろん嬉しいのですが、なぜ増えたのかの本質的な理由はわかりません。増えた理由がわからなければ、再現性を図ることが出来ないので、ずっと不安な日々を過ごすことになりますよね。田中さんとしては、数字を改善しようと焦る一方で、本質的な原因を探る毎日でした。そんな時に常連客の佐藤さんから「最近、顔を出せずにごめんなさい」と言われた時に閃いたそうです。昔はお客さんと良く会話をしており、生の声を商品のラインナップに反映させていました。お店も大きくなり現場に出る回数も減り、いつのまにかお客さんを見ていなかったと気づいた瞬間です。もちろん、アンケート用紙はレジ横に置いておりましたし、QRコードも設置済みです。ただ、それらを案内するという現場オペレーションもなく、形式上置いてあるだけでした。それから田中さんは、店内で普段の買い物について顧客にインタビューをするという施策を社員全員で行いました。お客様たちの反応は驚くほど温かく、「こんなふうに聞いてくれるなんて、嬉しい!」という声がたくさん返ってきたそうです。彼らの意見をもとに、商品の見やすさやシニア向けの案内を強化することに決め、顧客の声も顧客が見えるように提示し、掲示板を賑わすようにしたのです。この結果、数ヶ月後にはリピーターが15%増え、売上も前年比で12%回復することに成功しました。

事例2 飲食店Bの人間味あふれるサービス
親しみやすいをコンセプトにBARを経営する鈴木(仮)さん。彼は温かい雰囲気を大切にしていますが、最近似たようなコンセプトも増えてきており、集客の面で苦戦を強いられていました。集客もそうですが、単価もなぜか上がらない。というか減っている。単価を上げるにも常連が離れていきそうで怖いという循環に陥っており、次の施策が思いつかずにいたのです。悶々とした日々を過ごしていましたが、ある時、単価が上がらない理由の原因を見つけます。それは普段なにげもなくお客さんと会話をしている一コマ。会話の途中でお客さんが注文をする時にタブレット端末を操作するのですが、その時に会話が一定期間中断するんです。また、タブレットをお客さん自身が操作するので、いわゆる「飲みすぎちゃった」にはなりにくい状況だったんです。タブレットで管理されているので、今いくらくらい頼んで料金はこれくらいと画面に出るので、知らず知らずのうちに注文をセーブしていたんですね。また、お店のコンセプトである温かいからも遠ざかっていることに気づいたんです。良かれと思って導入したシステムが、もしかしたら単価減少の原因かもしれないということに気づき、いったん昔の口頭での注文のやり取りにもどしました。その結果、単価はびっくりするくらい元に戻ったんです。お客さんを見るという基本に立ち返った鈴木さんは、さらに集客を図るためBARのメニューについて、SNSを通じて、顧客からのアイデアを募るキャンペーンを始めました。すると、過去の常連だった多くのお客様が参加し、「特製スパイスのから揚げ」というメニューが出来上がり、人気を博しました。「この店は私たちの意見を大事にしてくれる」と、昔常連だった顧客も再来店してくれるようになり、お店の売上は前年よりも30%も増加しました。

顧客理解がもたらすもの
これらの事例から見えてくるのは、顧客理解を深めることで、単なる売上の向上にとどまらず、顧客との絆を強化し、ビジネスの本質を育んでいけるということです。顧客が感じる「人間味」は、単なる取引関係を越え、真の信頼を築くための基盤となります。「この店に来て良かった」「このサービスに登録して良かった」と思わせることで、顧客はまた戻ってきてくれると思いますし、今のような時代だからこそ人間本来の結びつきがよりビジネスに活きてくるのではないかと思うのです。
もう20年以上前になりますが、私は某リゾートクラブの会員権を販売する営業職をやっていたことがあります。その時に勉強になったのが、顧客管理ノートの使い方です。家族構成や趣味、乗っている車の車種、休日の過ごし方など、顧客の情報を書き込むシートがありました(もちろん厳重に管理されております)背景を知っているだけでも、提案力は増します。そこまでするという意味ではないですが、なぜ必要かの意識はあった方が良いと思います。

まとめ
さて、では我々企業としては、実際に何ができるのでしょうか?明日からでも始められる具体的なアクションプランをご提案します。
- 顧客フィードバックの定期的な収集・・・まずは、アンケートやインタビューを通じて、顧客の意見を積極的に収集しましょう。これは鉄板で必ずやってください。そして、定期的にタウンホールミーティングなどを開き、顧客と直接対話する場も設けると良いと思います。
- データ分析の導入・・・自社の顧客データを分析して、購買パターンや興味を持っている商品を見える化しましょう。必要に応じて、専門家を招聘して分析手法を学ぶのも一つの手です。顧客数が多い時は一人一人に合わせることが難しいので、ある程度カテゴリ別に分けることが必要です。重要なのは、お客様の声を拾ってから、カテゴライズするというマーケットインの思考です。
- パーソナライズの強化・・・これは、可能であればの施策です。リソースが少ない中小企業では難しいかもしれませんが、顧客一人ひとりに対してカスタマイズされた体験を提供するためのシステムを導入すると尚良しです。過去の購入履歴に基づいて「あなたにおすすめ」の商品を提案するなど、個別のニーズに応えましょう。大手ECサイトのあれです。同じようなものをアナログで店舗でしても、面白いかもしれません
- コミュニケーションの強化・・・顧客とのコミュニケーションを日常的に行いましょう。無料のニュースレターやSNSでの更新を通じて、ブランドのストーリーを顧客と共有することが大切です。売込みばかりの投稿では一方通行ですので、SNSの目的を決めておきましょう。
- 意見を反映した新サービスの開発・・・顧客から得た意見をもとに新しい商品やサービスを開発する際は、その過程を顧客に見せることも重要です。「あなたのアイデアが形になった」と感じてもらうことで、ブランドへのロイヤリティが向上すると思います。顧客を数字だけで捉えるのではなく、一人ひとりの「人間」としての存在に目を向けることで、本当の成功が見えてくるのではないでしょうか。どんなビジネスでも、顧客の心に寄り添うということが成功の秘訣であり、原理原則ですよね。さらには、顧客理解に紐づくKPI設定が出来れば尚良しですね。