優秀な社員が辞めていく

みなさん、こんな経験ありませんか?
「うちの会社、特に問題ないはずなのに、なぜか優秀と思われる社員が次々に辞めていく…」そんなこと。
実はこれ、意外と多くの企業で起きている問題なのです。

事例紹介
優秀な人が次々と辞めていく現場の実例
例えば、あるIT企業。技術開発の部署では、若くて才能あるエンジニアたちが活躍していました。彼らは給与や福利厚生もそこそこで、仕事内容にも満足しているかに見えました。それなのに、なぜか次々と辞めていく。理由を掘り下げると、「上司との関係性の悪さ」「キャリアパスの不透明さ」「会社の将来性に不安を感じた」など、複合的な要因が絡んでいたのです。
もう一つの例は、サービス業の中小企業。仕事は忙しいし、給与は平均的、それでも一部の優秀なスタッフが少しずつ辞めていきました。理由としては「自分の意見が通りにくい」「リーダーシップが不足している」といった組織の構造的な問題に加え、「仕事のやりがいや成長の機会が感じられない」といったモチベーションの低下も原因でした。
ブランドイメージの悪化と組織硬直化
さて、これを放っておくとどうなるか想像できますか?
まず、最も大きなリスクは「組織の硬直化」。優秀な人材が抜けていけば、技術や知識が失われるだけでなく、新しいアイデアや視点も失われ、会社の競争力は低下します。
そして、次に考えたいのは組織の「風通しの悪さ」。優秀な社員が去ったあとの空席を埋めるために、未経験者や中途採用社員を入れるケースもありますが、その育成には時間とコストがかかります。結果的に、全体のパフォーマンスが落ちたり、士気の低下が起きたりするのです。
さらに深刻なのは、優秀な社員の退職が続くと、「企業文化の崩壊」や「ブランドイメージの悪化」につながり、採用自体が難しくなるといった悪循環に陥ってしまうことです。

なぜ優秀な社員が辞めてしまうのか?
1. キャリアパスの不透明さ
優秀な社員は、自分の成長やキャリアの展望を求めます。それにも関わらず、会社側が明確なキャリアプランや昇進・昇格の基準を提示していなかったり、不透明だったりすると、次第にモチベーションは低下します。
2. 評価制度の曖昧さ
きちんとした評価制度がなく、成果や努力が正当に評価されていないと、「報われない」「自分の価値が認められない」と感じてしまいます。これも離職の動機になってしまいます。
3. 組織風土の問題
上司との関係や、組織の風通しの悪さも大きな要因。働きやすさは、長期的な定着に直結します。
4. 仕事の意義ややりがいの不足
やりたい仕事や成長できる環境がない場合。「何のためにこの仕事をしているのか」という存在意義を認識できない場合も退職を検討する理由の一つになり得ます。企業においてはMVVを日々の業務にまで落とし込むような一貫した運用をしてください。
5. 企業の将来性や働き方への不安
特に今の時代は、「会社がこの先も安泰か?」という不安も大きいですね。事業の先行きが見えにくかったり、コロナ禍の影響でリモートワークや柔軟な働き方が浸透しきれていないと、将来への不安感から退職を選ぶ社員もいます。
6. 報酬と福利厚生のミスマッチ
もちろん給与や福利厚生も重要です。競合他社が同じレベルの待遇を提示している中で、自社の待遇が見劣りすると、優秀な社員はより良い条件を求めて動き出します。
これらの要因が複合的に絡み合うことで、「優秀な社員の流出」が起きてしまうのです。
「この会社は終わり」というレッテル
もし、この問題に対して何もしなかったら、どうなると思いますか?最悪のケースでは、優秀な社員が退職を続け、会社の知識やノウハウが抜け落ち、競争力がかなり低下してしまいます。
それにより、会社の利益や評判が落ち、新規顧客や優秀な人材の獲得も困難になります。また、社員の退職が続くことで、残った社員の士気も下がり、「この会社は終わりだ」と感じ始め、悪循環に陥る危険性も。
このまま進めば、「採用コストの増大」「生産性の低下」「市場競争力の喪失」といった、経営戦略の根幹に関わる深刻な問題に発展しかねません。

優秀な社員が定着する仕組み
では、こうした問題を根本から解決するにはどうすればいいのか、そのポイントを具体的に解説します
1. 明確なキャリアパスの設定と共有
会社の中長期的なビジョンや、社員一人ひとりのキャリアプランを明示しましょう。
例えば、定期的な面談や評価制度の見直しを行い、社員が「次はどんな役割に就けるのか」「どうすれば昇進できるのか」を理解できる状態を作ることが大切です。
また、「スキルアップ研修」を設け、実践的な成長の機会を制度として構築することも重要です。
2. 公平で透明な評価制度の導入
評価基準を明確にし、成果だけでなく、努力やチーム貢献も評価に反映させる仕組みを整えましょう。
例えば、OKR(Objectives and Key Results)等を導入し、評価の透明性と公平性を高めることが効果的です。
3. コミュニケーションと組織風土の改善
上司と社員の信頼関係を深めるために、定期的にミーティングを行ったり、意見交換の場を設けたりすることが必要です。また、働きやすさや働きがいを促進する「心理的安全性」の高い職場環境をつくることも重要です。
4. 働き方の柔軟化と福利厚生の充実
リモートワークやフレックスタイム制度、社員の声を反映した福利厚生制度を構築し、健康管理や自己啓発支援などの制度を充実させるのも良いかもしれません。ただし、これは会社の戦略と照らし合わせたうえでの施策になりますので、過度に合わせるものではないと私は思います。
5. 企業のビジョンと将来性の伝達
会社のビジョンや事業の展望を積極的に伝えてください。社員に「この会社には未来がある」「自分の成長も望める」と感じてもらうことで、不安を払拭します。定期的に会社の進捗報告を開催し、目標に対して前に進んでいるかを共有してください。
6. 財務面でのインセンティブ制度の見直し
給与や賞与だけでなく、長期的なストックオプションや社員持ち株制度など、社員が会社の将来にコミットできる仕組みを導入しましょう。こうした制度は、社員のモチベーションを高めるだけでなく、「自分の仕事が企業価値の向上につながる」という実感を持たせる効果もあります。
7. 早期キャッチと退職防止の仕組み作り
社員の離職リスクを早期に察知する仕組みも重要です。定期的なアンケートやメンタルヘルスのチェックを行い、異変を感じたら速やかに対処できる体制を整えること仕組みが必要です。社員には定期的に『留意点やキャリアの方向性についての面談』を行い、問題の芽を摘み取る努力も不可欠となります。
8. 組織の継続的な改善とフィードバック文化の促進
最後に、改善は一度きりではなく、継続的に実施すべきということです。社員からの意見やフィードバックを積極的に取り入れ、会社として柔軟に対応していくことで、「社員が声を上げやすい文化」を築きましょう。ただし、愚痴と改善要望は違いますので、混合しないように気をつけましょう。

退職の理由に「会社の本質的な問題」が隠されている
さて、ざっとポイントを振り返ると、「優秀な社員の離職問題」は、キャリアの見える化、評価制度の改善、働き方の柔軟化、コミュニケーションの強化、将来性の伝達といった施策で改善可能です。
何より大事なのは、「どこかで気づき、早めに対策を打つ」こと。放置すればするほど、その後のコストや損失も大きくなるので、できる限り早めの対応を心がけてください。
離職自体に腹を立てることもあり、容認できない場面もあるかもしれませんが、退職理由には、真摯に向かい合ってください。そこに会社の問題の本質があるかもしれません。
「優秀な社員は企業の宝であり、最大の資産である」ということ。その資産を守るために、今日からできる小さな改善を積み重ねていきましょう。
