PL思考 vs BS思考 組織拡大の成功を左右する2つのアプローチ

組織が拡大する過程では、利益を追求しつつも、企業の安定性を保つことが求められます。そのためには、2つの重要な視点—PL思考(損益計算書思考)とBS思考(貸借対照表思考)—をバランスよく取り入れることが不可欠です。
この2つのアプローチは、単に財務だけでなく、人事や組織構築にも大きな影響を与えます。本記事では、PL思考とBS思考が組織拡大にどのように寄与するのか、人事やマネジメント、組織構築の観点で、それぞれのアプローチの特徴と活用方法について会話形式で解説します。
そもそもPL思考、BS思考とは?
B: 先生、PL思考とBS思考ってどういうものですか?それぞれの違いを教えてください。
A: PL思考とBS思考は、企業の財務を考える際に非常に重要な視点です。まず、PL思考は「損益計算書」に基づく思考で、企業の「利益」を中心に考える方法です。
B: なるほど、利益ですね。それって具体的にはどんなことを考えるんですか?
A: はい、PL思考では売上から費用を引いて利益を出すことにフォーカスします。例えば、月々の売上やコスト、利益率などを見て、ビジネスがどれだけ効率よく利益を生み出せているかを確認します。
B: あ、じゃあ利益を最大化するためには、売上を増やすか、コストを減らすことが重要ということですね。
A: その通りです。PL思考は「どれだけ利益を上げるか」が主な焦点です。一方で、BS思考は「貸借対照表」に基づくもので、会社の「財政状態」を重視します。
B: 財政状態ってどういうことですか?PL思考とどう違うんですか?
A: BS思考では、会社が持っている資産、負債、資本のバランスを見ます。つまり、どれだけの資産があり、どれだけの負債があるか、それによって会社の健全性やリスクを把握するんです。PL思考が「利益」にフォーカスするのに対して、BS思考は「資産と負債」の管理に重点を置いています。
B: なるほど、PL思考は「利益をどう出すか」、BS思考は「どれだけ安定しているか」ってことですか?
A: その通りです。BS思考では、企業がどれだけの資産を持っているか、それがどれだけ負債で賄われているかを見ることで、企業の長期的な安定性を評価します。利益が出ていても、負債が過剰だと健全な経営ができないこともありますからね。
B: なるほど、そういう視点が重要なんですね。じゃあ、実際に私の会社でどっちを重視すべきかはどう決めればいいですか?
A: いい質問ですね。最初はPL思考を重視することが多いですが、長期的にはBS思考もしっかり見ていく必要があります。もしまだ事業が成長過程にあるなら、まずは利益を上げることが最も大事です。でも、利益が出始めたら、その後は資産や負債のバランスを見て、安定的に成長できるような経営をしていくことが大切です。
B: なるほど、最初は利益を上げることに集中しつつ、その後安定性を重視していくんですね。ありがとうございます!
A: その通りです。最初からBSだけを気にしすぎても、事業が成長しませんからね。バランスを取ることが大切です。頑張ってくださいね!
マネジメントはPL思考?BS思考?
B: 先生、人事や組織構築についてもPL思考とBS思考のように考えるべきなんでしょうか?
A: いい質問ですね。実は、組織構築や人事に関しても、PL思考とBS思考の考え方を応用できます。それぞれの視点が違うアプローチを提供しますから、バランスよく考えることが大事です。
B: なるほど、PL思考とBS思考が組織にどう影響するのか教えてください。
A: まず、PL思考を人事や組織に当てはめると、利益や成果を上げるためにどう組織を構築するかという視点になります。つまり、効率的なチーム編成や、目標達成に向けての個人やチームのパフォーマンスを最適化することです。
B: 具体的には、どんなことを意識すべきですか?
A: PL思考では、各社員やチームがどれだけ成果を上げているか、また、その成果を上げるために必要なスキルやリソースを提供できているかを見ます。例えば、営業チームの売上達成度や、マーケティングチームのキャンペーン効果などがそれにあたります。成果を最大化するために、どう動けば良いかを考えるわけです。
B: なるほど、要は組織のパフォーマンスを最大化するために、どのようにチームや人材を活用するかという視点ですね。
A: その通りです。一方で、BS思考を組織に当てはめると、企業の「人的資産」をどう管理し、組織全体の安定性や成長を支えるかという視点になります。つまり、人材の定着や育成、組織の文化などを重視します。
B: それは、どういう点で重要なんですか?
A: BS思考では、短期的な成果だけでなく、長期的に安定して組織が成長できるための基盤を作ることが大事です。例えば、社員のモチベーションやエンゲージメントが低いと、長期的には離職率が高くなり、組織の安定性が損なわれます。したがって、社員が安心して長く働ける環境を整えたり、キャリアパスを提供することが重要になります。
B: なるほど、社員の定着や組織文化を整えることで、長期的な安定と成長が見込めるというわけですね。
A: その通りです。PL思考は短期的な成果を上げるためのアクションですが、BS思考は組織の長期的な健全性を保つための基盤作りです。どちらも欠かせません。例えば、組織のリーダーシップや、社員のスキルアップの機会を提供することも、BS的なアプローチにあたります。
B: なるほど、PL思考は「成果を出すためにどう組織を動かすか」、BS思考は「組織を長期的に安定させるためにどう人材を管理するか」ですね。
A: その通りです。特に小規模な企業では、初期段階でPL思考を強く意識して、短期的な成果を出すことが重要ですが、成長してきた段階でBS思考をしっかり取り入れないと、急速に拡大していく中で人材が不足したり、組織が不安定になったりします。
B: なるほど、じゃあ最初は成果を最大化するために人事を考えつつ、徐々に組織全体の安定性を意識していくという感じですね。
A: その通りです。例えば、最初は少人数でフレキシブルに動ける体制が求められますが、人数が増えてきたら、明確な役割分担や育成の仕組みを整えることが重要になってきます。社員一人一人が成長できる環境を作りながら、組織全体としても成長していくことが求められます。
B: わかりました!成果と安定、両方のバランスを取ることが大切なんですね。ありがとうございます!
A: その通りです。組織の成長には計画的なアプローチが必要ですが、柔軟性を持ちながら進めていくことが成功の鍵です。頑張ってくださいね!
起業3年経ってもしんどい方は・・・
人事や組織構築の観点でもPL思考とBS思考をバランスよく取り入れることが大切です。それぞれの視点が、企業の成長にどう貢献するかを考えることで、より強い組織を作り上げることができます。私の感覚ですが、「起業して3年程経つがずっと目の前の課題をクリアするだけで日々が終わっていく」という状態の方はBS思考を取り入れてみるとよいかもしれません。では、組織を拡大させていくためにどのようなアプローチをとっていけば良いかの大枠を説明します。組織が拡大していくためには、成長の過程に応じたアプローチが必要です。PL思考とBS思考のバランスを取ることで、短期的な成果を上げつつ、長期的に安定した成長を実現することが可能です。
目標: 成果を上げるための迅速なアクションと効率的なリソース活用
この段階では、限られたリソースを活用して素早く市場にアプローチし、収益化を図ることが最も重要です。PL思考が特に重要です。
具体的なアクション:
- 少人数のチームでフレキシブルに動く: 初期段階では、少人数で多くの仕事をこなす必要があります。全員が複数の役割を担い、スピード感を持って業務を進めます。
- 例: 小規模なマーケティングチームが、広告運用やSNS発信などを一手に担当。営業担当が自ら顧客対応を行い、反応を見ながら次の戦略を決定。
- 成果の可視化: 目の前の利益を確実に上げるため、KPI(主要業績評価指標)を設定し、どのチームがどれだけ成果を上げているかを明確にします。
- 例: 売上、リード数、コンバージョン率などのKPIを設定し、チーム全体で進捗を共有。
- 効率化とコスト削減: 限られたリソースを最大限活用し、無駄なコストを削減します。
- 例: 外注の活用、ツールを駆使して手作業を減らすなど。
目標: 規模拡大に伴う業務の専門化と、安定した組織作り
事業がある程度軌道に乗ると、組織が拡大する段階に入ります。この段階では、PL思考とBS思考をバランスよく取り入れることが重要です。特に、組織の安定性と成長を支えるための基盤作りが求められます。
具体的なアクション:
- 役割分担と専門化: チームメンバーを各専門分野に分け、役割を明確にします。これにより、業務の効率化とパフォーマンスの向上を図ります。
- 例: 営業チームは営業に特化し、マーケティングチームは広告運用やコンテンツ制作に集中。これにより、それぞれが専門性を高め、組織全体の効率が向上。
- 人材の採用と育成: 新たな人材を積極的に採用し、既存のメンバーにはトレーニングやキャリアパスを提供します。組織の成長に伴い、スキルアップやリーダーシップの育成が必要です。
- 例: 営業チームのリーダーを育成し、組織内で昇進できる道を整備。新規採用者には、入社後すぐに業務に必要なスキルを学べるオンボーディングプログラムを提供。
- コミュニケーションの強化: 組織が拡大するにつれて、部署間の連携が重要になります。定期的なミーティングや情報共有の場を作り、組織全体の方向性を統一します。
- 例: 毎週の全社ミーティングや月次レビューを設け、進捗や課題を全員で共有。部署ごとの成果を全体で確認し、互いに支援できる環境を作る。
目標: 持続可能な成長と組織の安定性の確保
組織が拡大し、安定した事業運営が可能になった段階では、BS思考が重要になります。資産や人的資源の管理、社員の定着、組織文化の維持がポイントです。
具体的なアクション:
- 人材の定着とエンゲージメント: 高い離職率は組織の成長を妨げます。社員のエンゲージメントを高め、長期的な定着を目指します。
- 例: 社員満足度調査を定期的に行い、フィードバックを基に改善策を講じる。福利厚生や柔軟な勤務制度を導入し、働きやすい環境を提供。
- 組織文化の強化: 企業文化が強固であることが、組織全体の協力体制を築きます。企業の価値観やビジョンを明確にし、社員全員が共有できるようにします。
- 例: 新しい社員にも企業文化を伝えるために、オリエンテーションで会社のビジョンやミッションを説明。社内イベントやチームビルディングを通じて、企業文化を体験できる機会を増やす。
- リーダーシップの層を厚くする: 組織が拡大するにつれて、現場をリードするリーダー層が求められます。リーダーシップを育成し、組織全体の統制を保つための体制を作ります。
- 例: 中間管理職やチームリーダーを育成するためのリーダーシップ研修プログラムを導入。明確な役割分担と、各リーダーが自分のチームを効果的にリードできるようにサポート。
目標: 事業の規模拡大と新市場開拓
成長が軌道に乗り、安定して利益を出せるようになった段階では、さらに規模を拡大し、事業の多角化や新市場への 進出を目指します。
具体的なアクション:
- 新市場への進出: 新たな市場や国への進出を目指します。既存のビジネスモデルを基に、新たなチャンスを捉えます。
- 例: 国内で成功を収めた製品を海外市場に展開するため、現地市場調査を行い、現地パートナーを見つけて販売戦略を立てる。
- 新規事業の立ち上げ: 新たな事業や製品ラインの開発に着手し、既存事業の安定性を支えながら、成長を加速させます。
- 例: 既存の製品のラインナップを拡充し、顧客のニーズに合わせた新商品を開発。異なる業界に進出して、リスクヘッジを図る。
ステージ2の攻略がカギ
組織の拡大には、ステージごとに異なるアプローチが必要です。初期段階では迅速に成果を上げることを重視し、成長段階では組織の安定性を確保しつつ、成熟段階では文化や人材の定着を重視します。私の感覚ではありますが、特にステージ2に移行する際にBS思考を持っておかないと基盤がなかなか築けません。このステージで苦労する経営者が多いように感じます。この段階からBS思考を持っておかないとマネジメントコストが膨大になってしまいます。
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